2026/06/23 23:26
こんにちは、青柳商店です。
先日ご紹介した、中国・台湾産ニッケル系ステンレス冷延鋼板・冷延鋼帯に対するアンチダンピング(AD)調査ですが、2026年6月23日に財務省・関税・外国為替等審議会より、新たな資料が公表されました。
今回は、中間報告に続き、暫定的なアンチダンピング(AD)関税率が示されましたので、その内容をわかりやすくまとめます。
前回の記事では、ダンピングの仕組みや各メーカーのダンピング率について解説していますので、まだご覧になっていない方はぜひあわせてご覧ください。
これまでの経緯
日本政府は2025年7月から、中国・台湾産のニッケル系ステンレス冷延鋼板・冷延鋼帯についてアンチダンピング調査を実施してきました。
対象となるのは主に、
・SUS304などのニッケル系ステンレス冷延鋼板
です。
約1年間にわたり、
・ダンピング(不当廉売)が行われていたか
・日本メーカーへ実質的な損害が発生しているか
・アンチダンピング(AD)関税を課す必要があるか
について調査が行われてきました。
調査結果
今回公表された資料では、
ダンピング輸入が行われていたことが推定される
さらに、
日本国内の産業へ実質的な損害が発生していることが推定される
との判断が示されています。
また、
今後さらなる調査期間中に損害の拡大を防止し、本邦産業を保護するため、暫定措置を発動する必要がある
との考えも示されました。
日本メーカーへの影響
資料によると、
・中国・台湾産品の輸入量は増加
・市場占拠率も拡大
・日本製より安い価格で販売
された結果、日本メーカーでは、
・販売量の減少
・売上高の減少
・営業利益の大幅な減少
という状況になったとされています。
営業利益は、2022年を100とした指数で見ると、
2026年には40まで低下
という非常に大きな落ち込みとなっています。
暫定アンチダンピング(AD)関税率
今回公表された暫定的なアンチダンピング(AD)関税率は次のとおりです。

今回の資料だけでは色付きの各メーカー名は明記されていませんが、中間報告書との対応を見る限り、サンプリング調査に協力した企業には比較的低い税率を適用し、それ以外の供給者には高い税率を適用する整理になった可能性が高いと考えられます。
※上記は公開資料を基にした青柳商店の考察であり、正式な対象企業については今後公表される官報などで確認する必要があります。
今後どうなる?
今回公表されたのは最終決定ではありません。
今後も追加調査が行われ、
・最終的な関税率
・対象企業
・適用期間
などが正式に決定されます。
一方で、政府は、
「本邦産業を保護するため、暫定措置を発動する必要がある」
との判断を示しており、アンチダンピング(AD)関税の方向性はかなり明確になったと言えそうです。
最終決定までは引き続き調査が続きますが、まずは今後4か月間、暫定的な関税措置が実施される見込みです。
ステンレス市場への影響は?
今回の措置により、中国産・台湾産ステンレスを多く扱う商社や流通ルートでは、価格や調達方法に影響が出る可能性があります。
特にSUS304などのニッケル系ステンレスは、今後の価格動向に注目が集まりそうです。
一方で、実際の市場価格は、
・ニッケル価格
・為替相場
・国内需要
・各メーカーの生産状況
など複数の要因によって決まります。
アンチダンピング(AD)関税だけで価格が決まるわけではないため、今後も総合的に市場を見ていく必要があります。
青柳商店の視点
現時点では、暫定アンチダンピング(AD)関税の開始日など、不明確な点も多く残っています。
調査開始日は2025年7月22日で、調査期間は2026年11月21日まで延長されています。しかし、6月23日に公表された資料では、暫定措置を発動する必要があるとの判断が示された一方で、開始日については明記されていません。
そのため、今後の閣議決定や官報の公布時期によっては、調査開始から1年となる7月22日を待たず、7月上旬にも暫定アンチダンピング(AD)関税が発動される可能性もあると考えています。
実際、直近の中国産黒鉛電極に対するアンチダンピング調査では、調査期間が4か月延長されたにもかかわらず、最終決定は当初の期限より約1か月前倒しで行われました。結果として、延長期間は実質約3か月となりました。
もちろん、今回のステンレス調査でも同じ運用になるとは限りません。しかし、過去の事例を踏まえると、調査期限である11月21日を待たずに手続きが進む可能性も視野に入れておく必要がありそうです。
特に、今週以降の閣議で関係政令が決定・公布された場合には、7月上旬から暫定アンチダンピング(AD)関税が適用される可能性もありますので、中国産・台湾産のステンレスだけでなく、SUS304を取り扱う商社や加工業者、需要家の調達戦略にも影響を与える可能性があります。
まだ最終決定ではありませんが、今後の官報や財務省・経済産業省の発表によって、対象企業や関税率がさらに明確になっていく見込みです。
青柳商店でも、引き続きアンチダンピング調査やステンレス市場の動向を確認し、業界目線で分かりやすく情報を発信していきます。
